「はい。お二人の事は知っています。」
知ってるってなんで?
聞きたかったけど先に"未衣"さんが口を開いたので、私は口を噤む。
「あたしは 篠原未衣 と言います。
今日は突然来てしまってすいません。」
彼女は、軽く会釈をして名前を名乗った。
「篠原……未衣さん……」
やっぱり、雅さんと苗字が同じだった。
それは、2人が籍を入れているという事。
ガツン、と頭を鈍器か何かで殴られたような錯覚に陥る。
「未衣って呼んで下さい。
周りはそうやって呼んでくれないので…」
彼女は寂しげな笑顔でそう言った。
それは、雅さんの奥さんだからだろうか?
「…未衣。
私もさん付けとか要らないから奈美って呼んで良いわよ。」
奈美が 未衣 と呼んだ瞬間、彼女は見惚れるくらい綺麗に笑った。
「…なぁちゃん。って呼んでも良いですか?」
「なぁちゃん?」
「あたし、深く関わる人はアダ名で呼ぶんです。
だから、2人はこれからも関わる事になるからなぁちゃん。」
私は…どんなに逃げ出したくなっても、雅さんと未衣さんの姿を見なくてはいけない。
そう言われている気がした。


