「雅さんの……奥さん……」
二人には聞こえない小さい声で奈美に教える。
……言葉にすると、改めて実感する。
私は目の前のこの子に叶わない…って。
「電話は終わったの?」
「んー。
多分またすぐ来ると思うー。」
「そっか。
無理はするなよ?」
「はぁい」
私の事を良くは思っていないであろう秦さんが、雅さんの奥さんに雅さん同様
すごい優しいから。
愛おしそうに奥さんの事を見てるから。
大切なんだって、ひしひし伝わってくる。
「……可愛いなぁ。」
無意識のうちに、心の声が漏れていたらしい。
気付いた時には遅かった。
喋っていたはずの秦さんと奥さんが、私と奈美の方を向いている。
どうやら、私たちの存在を忘れていたらしい。


