ーーガラガラ


「あっ……」


「…………」


秦さんが入ってきた。


未だに涙を零している私を、いつかに見た冷たい秦さんが見下ろしている。


無表情で私を上から見下ろす秦さんにどうしようもない気持ちになる。


「ふーん。
さっきトイレに行ったから、もしかしたらとは思ってたけど。
やっぱりね。」


「な、にがですか……」


「雪ちゃんが"あれ"を見ると思ってたって事。」


あれって雅さんと奥さんの事かな?


……それしかないか。



「………」


「前に、俺言ったじゃん。
雅を好きになるなって。
あれはつまり、そういう事。」


「………」


「これから一緒に住む事になって、あれを毎日見て堪えられるのは雅に恋心を寄せてない女だけ。
……まぁそんな女居ないけど。」


無表情だし、言い方にトゲがあって怖いけど
だけど、秦さんの発言は私を考えての事だったみたい。