「出会った時には言っておくべきだった。
でも、中々言えるタイミングがなかった。
気付いたらもう…手遅れだったみたいだ。
雪ちゃん。」
「私…ですか?」
秦さんが、なんの事を言っているのかサッパリ分からない。
「本当は、最初に言っておくべきだった。」
「な、にをですか?」
嫌な予感がする。
聞きたくないと、耳を塞ぎたい。
秦さんの前から、逃げたい。
バクバクと、心臓が嫌な音を立てる。
「雅を好きになってはいけない。
とね。」
……心臓が痛い。
……秦さんが、怖い。
絶対零度の冷たい瞳で私を捕らえる。
逸らしたいのに…逸らせない。
無機質で、感情の篭っていないその声が
頭の中で駆け回る。


