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「綺羅ちゃん?綺羅ちゃん?」
しーちゃんの声であたしはハッとして現実に引き戻された。
「ユキ先輩もう行ったよ?行こ?」
『ユキ先輩』
その言葉が聞こえた途端
あたしの目から堰を切ったように涙が溢れだした。
「えっ?どうしたの?綺羅ちゃん??」
しーちゃんが困るってわかっているのに止まらない。
むしろ困ってしまえば…なんて最低なことを思う。
一度溢れた涙は次から次へと流れた。
しーちゃんは困惑しながらも
あたしを駅前のカフェまで連れて行ってくれた。
「綺羅ちゃん…?大丈夫?」
アイスティーを飲んで落ち着いたあたしに
しーちゃんが不安そうに眉を寄せる。
カランと1粒氷が砕けた。

