「綺羅。来い。」
いきなり教室のドアが乱暴に開き、
黄色い悲鳴に包まれたアイツがあたしを鋭く睨みつけてきた。
え?え?何…?怖いんデスガ…?
「来い。」
有無を言わさぬ口調におののいたあたしは
渋々アイツのあとを小走りで追った。
着いた先は…
「図書室?なんで?」
「いいから入れ。」
アイツはあたしを中へ押し込むと席に座らせ
「何が苦手なんだ?」
と聞いてきた。…んん?
「何の、教科が、苦手なんだ?」
あからさまにイラつくアイツに
「数学ですっ!」
と敬礼して叫ぶと
敬礼したその手をパシンっと叩かれた。
「いったぁ…何して…」
「数学の教科書出せ。」
「……はい。」
迫力に負けたあたしは
数Ⅰの教科書とお気に入りの青い鳥が描かれたノートを渋々と取り出した。
水色を貴重とした背景に
銀の鳥籠に入れられた青い鳥が
鮮やかに映えている。
そしてそれに向かって手を伸ばす
小さな男の子の影。
お気に入りのそのノートに思いを巡らせあたたかな気持ちになっているあたしに
「とりあえず、ここからここまで解け。」
そう言ってアイツがゆびで示してきたのは
「7.70ページ!?多いっ!」
「うるさ…練習問題なら簡単だろ。」
そうため息をついて睨みつけられたあたしは観念して問題を解き始めた。

