「ねぇ、アンタ。」
苛立たしげなその声に
あたしはぴくりと固まった。
「は、はい…?」
「そのネクタイ、蒼?」
ネクタイの色…?
どう見てもあたしのは蒼色だけど…
「そうですけど……」
あたしがそう言うと先輩は肩を揺らしながら去って行った。
…なんだったんだろう?
不思議に思いながらも入学式の会場にあたしは足を進めた。
*
「みなさん。ご入学おめでとうございます……」
周りを見渡してみると
登校日よりもちょっとだけ人数が少なくて
契約の話は本当だったのだと気づいてひやり、とした。
…もしかしたら今頃あたしは、桜火に通えてなかったのかもしれないんだ。
相手がアイツだとはいえ、契約できただけ良かったのかもしれない。
…まあ、アイツに感謝するのは嫌だけど。
そんなことを思っているうちに入学式はあっという間に終わり
あたしたち1年生はそれぞれのクラスで顔合わせとなった。