「…わかったわよ。
あたし、アンタと契約する。」
意を決してそういうと
アイツはまたにやりと笑った。
「ひとつだけ条件な。」
「なによ。」
コイツのことだから実現不可能な条件とか出してくるんじゃ…
そう思って身構えていたらソイツは思いにもよらないことを口にした。
「俺を好きにならないこと。以上。」
「はぁ!?誰がアンタなんかを…」
「だからいいだろ?女よけにもなるし。」
そういうとアイツはシュルリと自分のネクタイをはずして
器用にあたしの首にかけた。
「じゃあな。」
そういって背を向けてからアイツはもう一度立ち止まって
「それと、俺の名前、浅日柚だから。」
そういってから去っていった。
「なにアイツ…」
あたしの胸元では
綺麗に結ばれた蒼色のネクタイが
ゆらりゆらりと揺れていた。

