………でも、
大きくてあたたかい手が
あたしの腕をぐっと掴んで
柚くんはあたしを
引き止めたんだ。
「なんで………。」
なんでまた期待させるの?
柚くんが選んだのはリカさんなんじゃないの…?
ねぇ、また。
そんなことしたら
バカで単純なあたしは
柚くんの隣を望んじゃうよ?
また想ってくれてるんじゃないか
なんて、期待しちゃうよ?
だから……
「違うんだよ。綺羅。俺は………」
「離してよっ!!」
聞くのが怖くなった柚くんのことばを
途中で遮って
あたしはそう叫ぶと
自分の心を振りきるように
バッと勢いをつけて
柚くんの手を振りほどいた。

