「お待たせ〜!」 あたしは小走りでアカネの元に寄る。 「もぉー。綺羅、遅いよー!」 「ごめんごめーん!………」 あたしはそう笑って視線をあげると ………そこから、目が離せなくなった。 さぁーっと春の静かな風が吹きぬける。 胸がドクン、と鳴り 握り締めていた手からカバンが滑り落ちる。 しっかりとしめていた筈の鍵が カチャリ、と音を立てて開いたのに気づいた。