アイリのお祖父さんの道場へ着いて


身支度を終えて
軽く身体を動かしていると
明夫君が到着。


レイジは少年の頃から綺麗な顔で
剣道着がとても似合っていたけど
大人の男になったレイジの道着姿を
初めて見た。


周りの人が3度見するくらい
超絶にかっこいい。
スタイルやルックスは勿論の事
気品溢れていて、色気まである。


本当、人を魅了する妖怪みたい(笑)



明夫君がアイリのお祖父さんに
挨拶をして、身支度をしてる間
私たちは個々で体を動かしている。


私は今日は自分のペースで
無理のないようにって
アイリのお祖父さんに言われてるので


黙々と素振りをしていると
アイリが真剣な顔で私の所へ
寄ってきた。


アイリは竹刀を持つと目の色が
変わるのです(笑)


明夫君とレイジと絡んだら
ノックアウトだなんて
朝は言ってたけど、道着を着て
竹刀を握ると顔付きがキリッとなって
凄くかっこいい女の子に変貌するの。


そして、優しくもあり、恐ろしく強く
鬼教官になる(笑)


私の剣道の先生は
剣道三段のアイリ先生です!!


ちなみに、レイジも剣道三段
明夫君は六段です。


剣道の有段には年齢制限等色々と
制約があるの。


「ミカ、怪我明けにしては
よく振れてるけど、力みすぎ。
力むと真っ直ぐ振れない。
いい?見てて」


と、アイリが言うと
素振りをして見せてくれた。


アイリの素振りはいつ見ても
素晴らしい。


体制が全くブレない。
無駄な動きが全くない。
それを私よりも3倍速でやっちゃうの。


小学生の頃、レイジについて行って
1年ほど私は剣道を習っていて


そこの道場はアイリのお祖父さんの
道場と同じくらい名門道場で
強い人はたくさんいたけど


男の強い人まで軽々打ち負かす
女の剣道家を私は見たことが無い。


アイリはそれを軽々やってのける。
本当に強い剣道家なのです!


そこへ、明夫くんが身支度を終え
礼をして中へ入ってくると


真剣な顔してアイリの素振りを見る。


いつものアイリなら明夫くんの
格好良さにメロメロになっちゃうのに…


だって、明夫くんの道着姿もまた
人を魅了する
妖怪みたいなんだもん(笑)


剣道着を身に纏ったアイリは
いつもの小さくて可愛い
女の子とは全くの別人。


雑念が全く無く精悍な顔して
竹刀を振っている
立ち姿から全て本当にキレイなの。



明夫くんは少しの間
無言でアイリの素振りを黙って見ていたけど、フッと表情を緩めると口を開いた



「アイリちゃん、こんな
強い
女子は俺初めて見たよ。
でも、たまに少しだけ状態が上に
伸びる癖があるね?
ここに打ち込んでごらん?」


明夫くんは木刀を持ってきて
正面に立つとアイリの目の高さに
木刀を構えた。


アイリはそれを真剣な顔して
何度も打ち込んでいたけど50回目
くらいで


「あっ、やば…本当だ」


思わず声を出したアイリ。
私には一体何があったのかわからない
くらい、完璧に見えたけど
明夫くんは全てお見通しのようで


木刀を降ろすと


「ねっ?今の感覚わかったでしょ?
ここをなおすだけでアイリちゃんは
まだまだ強くなる。
少しの間、誰かにこの木刀を持ってて
貰って3000本打ち込んだらおいで。
いい?速く、正確に、抜くとこ抜いて
入れるとこ入れる。」


3000本???!!


声色は優しいけど…
明夫くん何気にアイリより
鬼教官??


そうだった!忘れてた!!
昔、明夫くんの扱きに耐えられず
武夫くんは逃げようとした事があったっけ…


ひぇ〜っ!


その言葉に顔色ひとつ変えずに


「はい」


と真剣に頷くと、アイリは
道場の先生の1人にお願いして
黙々と言われた事をやり始めた。