「……。」 母が控室から出て舞台に上がったのか、 声が聞こえてきた。 「ここから偶に見てるんだ。 桜さんのこと。客席には、行く気無いし。」 腕組みして小さく動く母の姿を 見ていた彼が、なんでだか切なく見えたのを今でも 覚えている。 「……。」 「……」