「すみません、何となく目に力がない気がして……」
彼は、あぁと目に手を当てた。
眼鏡を外し目頭を押さえた。
どうしたんだろ。
「……蓮花は、腕をもがれるより
辛く痛い思いをしたことがある?」
「え?」
「おれは分からない。
……でも家で飼っていた犬が
亡くなった時は悲しかった。
ずっと一緒にいたから。
子供の頃から。でも、それはひとじゃない。
だから本当の意味で腕をもがれるより
辛く痛い思いをしたことがないんだよ……。」
「直昭さん?」
「………。」
「教えて欲しい。蓮花のお母さんのこと。」
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