ハナミツ












映画が終わって、映画館から出た。






「面白かったですね。」


「はい」




綾瀬さんはニコニコしながら映画のパンフレットを握りしめていた。




「次は、お茶でものみます…」


「直君?」



人混みの中から、誰かの声がした。



「……。」




綾瀬さんが振り返ったら、女の人がいた。
ショートヘアーの可愛い女の人。




私よりは年は上に見える。
買い物帰りらしくブランド名の入った紙袋を持っている。




モデルさんみたい。



「……久しぶり」


「久しぶり。ごめんなさい、直…
綾瀬君の声がしたからつい、話しかけてしまって。」





綾瀬さんは、女の人を知っているらしく
挨拶を返したけれどどこか他人行儀な気がした。

そういえばです、ますで話していない綾瀬さんは
はじめてかもしれない。




「…元気にしてた?」


「まぁ、それなりに。…」


「そう。よかった。」


私を見て、少しだけ苦笑した。
話がなが引きそうなら私は近くで待ってようかな。



「……あの、綾瀬さ」



「ごめん。もう行くから。」