「あ、綾瀬さん。」 少し遠くから俺を呼ぶ声がした。 「綾瀬さん、こんばんは。」 背中からたったっと近付いてくる音がした。 振り向いたら、 「綾瀬さん?」 俺が何も言わないから藤ノ宮さんはポカンと俺を 見ていた。 「……すみません、ぼうっとしてて。 こんばんは。」 「良かった。今日は大量です、 沢山借りますー。」 俺が言うとほっとしたみたいに笑った。 花。 いつも彼女から花の香りがする。 香水じゃない、甘ったるい香り。