「……………わっ!」


いきなり、背後で大きな声がした。


「きゃあぁぁぁぁ〜〜〜っ!!」


見事なまでにびっくりして私に飛びついてくるサキ。


「ははは、この位で驚いてるようじゃあ、まだまだね〜〜。」


振り返ると、見慣れた恰幅の良い体型の女性が立っていた。


長瀬藍子(ながせあいこ)。ここの看護師のリーダーを務める、ベテラン中のベテランだ。その存在は、いつも我々の心の支えとなっている。


「な、長瀬さぁぁぁん………。」


サキは、長瀬さんと分かって気が抜けたのか、私につかまったまま動けないでいる。


「あの、長瀬さん。田町さんの遺体は………。」


私は、サキをちゃんと立たせながら、長瀬さんに尋ねた。


「………って事は、そっちもまだ見つけてないのか。

狭い病院だからね〜。もう見つかっても良さそうなモンだけどねぇ……。」


長瀬さんはそう言って、頭をかいている。


私は、長瀬さんに床に続いている水の跡の話をした。


「……へぇ。誰か霊安室へ行ったのかしら?」


そう言って、私たちの方をじっと見つめる。


「……ははぁ……、なるほど……。」


すると、長瀬さんは私たちの背中をその大きな手のひらでバシバシと叩き、

「ハハハ、馬っ鹿ね〜〜〜!

死んだ田町さんが歩けるワケないでしょ〜〜〜?」

私たちの不安を吹き飛ばすかのような豪快さでケラケラと笑ったのだった。





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