弾いている間、裕くんがまっすぐこっちを見ていることに気付いた。


私は、わざと手元に視線を落とした。



なんだろう。


この感じ。


学校のみんなには知られたくないから、何駅も離れた駅前とかで路上で弾いたことはある。

だから、見られての演奏は初めてじゃない。

でも、その時とも何かが違う。



心拍数が一気に上がって、感覚が研ぎ澄まされていく。



気づくと裕くんがハミングしていた。


私はそれを聞いてますます指の動きを鋭くした。