あんなに大事にしてた。


割れそうなガラス細工を扱うように。

もし、矢野春華が言うことが嘘で、兄貴が振られたなら…


その推測が真実なら…

兄貴が一番大事にしていたものを横からかっさらったことになる。


だから、兄貴には黙っておこう。


しばらくは数学の補習の時間が早くなったって言い訳して、

帰りはカラオケボックスで歌の練習を遅くまでして帰って夕飯の時間をズラせばいい。

なるべく、顔を合わせないようにしよう。

兄貴は勘が恐ろしくいいから、顔を長い間合わせてたらひょっとすると僕の変化に気づくかもしれない。