そんな僕が、家に入ったのは夜10時10分前。


「おかえり、裕。話、あるから来い。」

兄貴がリビングから顔を覗かせた。


兄貴は時々、有無を言わせないところがある。

席に着くと、ラップがかかった、二人分の夕食。

今晩はカレーだったようだ。


「僕、いらないってLINEした。」


いや、言うべきことはこんなことじゃない。


今の兄貴は随分、機嫌が悪い。
変に逆撫でしないほうが得策だ。


「そのあと、今日は真っ直ぐ帰ってこいってLINEした。」


「なに……僕の親気分かよ。」

違う、こんなこと言うな。
頼むよ……僕の口。