この音はなんだろう。
多分、鉄板を叩く様な音だった気がする。
鉄板、鉄板・・・
俺は周りを見渡し、掃除用具入れのロッカーに目を付けた。
ライオンやトラやサルがいるのかもしれない・・・
俺は恐る恐るロッカーを開けた。そこには
「綾音?」
そこにはロッカーの中で寝息を立てるアイツがいた。
何でそんな所にいるんだろう。
アイツの手には小さなビニール袋がある。
それってもしかして、俺宛てのチョコかな
アイツはゆっくりまぶたを開けた。
「ゆりね?朝なの?」
アイツはそう言いながらゆっくり左右を見て、俺を見た。
「おはよう田s・・・田代!?」
アイツは水を打った様にハッとして、アタフタとし始めた。
「あっ、あのっ、あれっ、そのっ、ねっ、これあげる!」
アイツはそう言って俺にビニールの小袋を押し付けてから、自らロッカーを閉めた。
「私、田代が好きかもしれない。だからこれは本命チョコかもしれない」
アイツはロッカーの中から声を張った。
声からして照れている事が分かって、なんだか愛おしく感じる。
「綾音って可愛い所があるんだな」
「そんな事どうでもいいからロッカー開けてよ!出られない」
自分から閉めたくせに。
俺はロッカーを開けると、顔を真っ赤っかに染めたアイツと目が合った。
「田代ありがとう・・・」