コトノハの園で



カウンターへ戻る際、ふいに窓の外に視線が泳ぐ。


そこには、桜ちゃんと深町さんが、仲良くジャンケンをしている姿があった。


落ち着いて、遠くから観察することが出来て認識する。


深町さんは、よくここに通っている人だ。


けれど、多く見かけるのは、館内よりも別の場所。中庭の片隅にある、知る人ぞ知るベンチに座っている姿。


そのベンチは、僕の特等席でもあった。


「……どうりで、館内での姿と記憶が重ならないはずだ」


「えっ? 何か言いました? 森野さん」


「っ!? いえっ。何も……」


どうやら呟いていてしまったみたいで、背後で作業をしていた同僚に首を傾げられてしまった。


一旦、この関連のことは忘れようと努めた。