「この研究はね、多くの犠牲を払って行ってきたものだ。
01に選ばれた者でも、海のように死ぬものも多くいる。選ばれた者はみんな怖いんだよ。
いつ、あんな風に崩れて醜い死を迎えるのかと、怯えてる。
副作用が起こったら止める術は無いけど、抑える薬ならある。
でも研究所がなくなったら、彼らに生きる場所は無い、抑える薬も無い。
だからきっと、必死でキミを殺しに来るだろうね。良いのそれで?キミにだって言えることなんだよ?」
「……確かに、私は……その人達の居場所を、命を奪うのかも知れない、私自身の安全も……。
でも、私は、自分の保身を取ってもう後悔したくないの!
私が必ず、見つけてみせる!
私も、私や、彼らが元に戻る為の、人間に戻る為のモノを見つけて見せる!
どんなに追われても、どんなに殺されかけても!それが、私が出来る、償いなんだ!」
すると突然私の後ろから声が聞こえた。
「そうですね。僕も、探してみせます。」
後ろを振り向くと微笑みながら、ある人物が立っていた。
「エリック!」
私がそう叫ぶと、葵は「ふ~ん」と小さく言って
「優しい化け物の登場か。早いね、僕がけしかけた連中じゃぁ、役不足だった?」
不敵に笑うと、エリックはにこやかに短く返事を返した。
「ええ、まあ。」
「優しい、化け物?」
私が訝しがっていると
「ああ、キミまだ知らないの?」
葵が、軽い口調で話し始めた。
「こいつ【テレパシー能力者】なんだよねぇ。エリックのおかげでキミはある意味、命拾いしたんだよ。エリック(優しい化物)がキミに意識(テレパシー)を送って、脳の回路を一時的に繋げ、エリックが見ていた〝あの日の出来事〟をキミに見せて、僕の心呪縛を完全に解いちゃったんだよ。」
(そうか、だからエリックと話していて違和感があったんだ。それに、私を助けてくれてたなんて……)
あの日、私が01を打たれた所を見れたのはエリックが見ていた光景だったからなんだ。
じゃなきゃ、打たれてる所なんて見れないよね、私気絶してたんだから。



