「やっぱりね、どう考えても見えないもの!人をからかうのも大概にしなさいよ!
だいたいアンタ、さっきから何なの!?人の事何だと思ってるのよ!?」
私はカッとなり大声を上げた。すると葵は眉を顰め、顔を強張らせた。
「キミの言えた義理じゃないよね。キミだって、海の命を奪ってここまで来たし、
自分の意思じゃないとはいえ、多くの命を奪って生き延びて来たんだから。」
物静かに言った葵の姿はどこか儚げに見えた。しかしカッとなっている私はまた大声を出して怒鳴った。
「何よそれ!貴方が言うセリフじゃないわ!」
「そうかも知れない。だけどそうじゃないかも知れない。」
葵はそう静かに言うと、冷静に話を続けた。一方私は熱くなりながらその話を聞いていた。
「キミには覚悟がある?
この先の事を考えた事がある?僕にはキミに覚悟があるようには見えないんだよね。
僕は絶対ここでキミ達を処分するけど、もし万が一、あり得ないけど逃がしてしまったら、
きっとこれから長きにわたってキミは追い詰められることになる。
まあ、ウチは優秀なのが多いから長くなる事はないと思うけど。
これからきっと、多かれ少なかれ、キミは人を殺す。
それはキミが生き延びるために必要なことになるだろうね。
それは月組をキミの元に行かせた時に逃げたキミの責任だ。キミは責任を取らなくちゃ、そうでしょう?
だけどキミには覚悟がない!幟呉達の後ろに隠れてビクビクしてるのが関の山だね。
追われるのは君の責任、逃げたことから始まるキミの運命だ。
幟呉達にだって同じ事が言えるけどね。……理不尽だと思うかい?
だけど、僕は責任も覚悟もないで簡単に何でもかんでも決める奴が大嫌いなんだよね。」
いくらキライだからって、何でアンタにそこまで言われなきゃならないの!?
そう言ってやろうと思ったけど、止めた。
何となく葵が真剣に話していた気がして。
「……そんな大層なこと言われたって、私は分からない。
だけど、一つだけ誓う事が出来る。私は、もう人を殺さない。
もしも、殺す事になっても、私は、その人の人生も背負って生きる。
だからって、殺されてやる気も無い。
生きて、逃げて、生き延びて、必ず、研究所を潰す!!こんな異常な研究なんて要らないと思うから。」
私は葵を見つめながら言う。
はじめて答えが出たような気がした。
「そう……例え多くの犠牲を払ってもって、言うんだね?」
「え?」



