急に靭が止ったせいで、私は靭にぶつかってしまった。
「靭、あんた走るのはやすぎ……!」
痛いし、速いしで、へとへと……。
やっと出た言葉を無視して、靭はゆっくりと振り返ると、咳払いして
「お、お迎えに参りました、お姫様。これより私めが、エスコートさせて頂きまス」
私は言葉が出ないほど驚いた。
唖然としてる私の手を取り直した靭は、その手の甲にそっと口付けした。
思わず顔に熱が上がる。
私、今、絶対顔赤い。
だけど、靭の顔は私よりも赤かった。
恥ずかしそうに鼻をさわって、手にポケットを入れて前を向いた。
「んじゃ、行くよ。」
と、呟く。
「あ、うん。でも、どこ……え?」
聞き終わらないうちに靭は走り出していた。
「ちょ、ちょっとぉ!どこ行くのよぉ!?」
負けじと靭の隣へ行くと
「ごめんね圭子ちゃん。言っちゃダメなんだ!」とにこやかに言う。
「はあ?」
私が靭について行くのと、話に夢中になっていると
ドン!
と音と衝撃がして、私は尻餅をついた。
「きゃ!……痛っ」
私が起き上がるよりも先に、子供が手を差し伸べてくれた。私よりも2、3歳ほど年下に見える。
周りを見回してもそれらしい人はいない。
「キミに、ぶつかっちゃったのかな?」
そう尋ねると、少年はコクリと頷いた。
「圭子ちゃん?」
数百m先で靭が私がいない事に気づいたらしく、名前を呼んだ。
「あっの野郎!もうあんなに遠くまで行ってる!……ごめんね、ケガない?」
私が謝って、そう聞くと少年は首を縦に振った。それを確認した私は
「本当にごめんね」と謝罪してから靭の元へと向った。



