――圭子達が穴に入った頃――
残された、荒れ果てた部屋で葵はエリスを腕に抱いていた。
ポツリと呟いた言葉は、哀しみを帯びていた。
「エリス、もう目覚めてはくれないのか?」
葵はただただ、エリスの顔を見つめていた。
するとエリスの唇が動いて
「目覚めてたわよ。」
エリスの青い瞳がゆっくりと開かれる。
エリスは起き上がりながら、絶句し、自分を見つめている葵に破顔した。
「随分と、驚いているのね。」
「あたりまえだろ。」
呆れて葵が言うと、不貞腐れた。
「なぜ俺の問いかけに応えなかった?」
「怒ってるの?だって、私が目を覚ましたと分ったら、貴方また、そっけない態度を取るんでしょう?」
「だけど――」
葵は何かを言おうとした途端、急に咳き込み出した。
「翔?」
「――ゲホゴホ、大丈夫だ――ゴフ!」
心配させまいと微笑った瞬間、翔の口から血が塊になって飛び出して来た。
低い音が耳につく。エリスは絶句し、そして何かに気づいた。
「翔!貴方やっぱり……!?薬の投与時間はいつなの?いつから、その症状出てるの!?」
「何……のことだ?」
切迫したようすのエリスに、葵はとぼけたように微笑んだ。このことに、エリスは激怒した。
「私が気づかないとでも思ってたの!?」
エリスが大声を上げると、葵の髪が生え際から段々白く変色し始めた。
「……翔!薬は、【H(エイチ)・T(ティー)・H(エイチ)】はどこ?」
「無理だって、シールド開かないんだから。」
「でも、苦しいんでしょう?」
「大丈夫だよ、全然平気……」
笑ってみせるが、息遣いが荒い。
そんな葵を見て、エリスは諦めたように、フゥとため息をついた。
「貴方って、本当に損な人ね。それでもって、肝心な時にいつもヘマするのよ。あの娘(コ)に責任だの覚悟だの言ったのは本音でしょ?あんな娘(コ)のこと心配しちゃって!悪役は自分の事しか考えなくちゃダメなのよ?」
不貞腐れて膨れっ面をしたエリスに葵は「ハハハ!」と笑って
「分ってるよ、でもつい出ちゃったんだ。でも柳田友未を引き合いに出したのは、僕を憎ませようと思った訳でも、心配した訳でもないんだ。ちょっと、意地悪したくなっちゃったんだよ。エリス(キミ)を殺したのはあの娘(コ)だから……。」
「あなたじゃないの?」
以外そうにエリスが言うと
「心外だな、僕のわけないだろ」
「冗談よ」
苦笑する葵に、エリスはいたずらそうに微笑む。
「あの時、僕の術より一瞬、彼女の気持の方が上回った。その時の彼女のグルグルとした「怒り」や「憎しみ」は破られた一瞬で、一気にキミに向かって行った。多分一瞬だけ、薬を投与された時の事を思い出したんだろうね。キミを殺したのは、彼女の意思だ。例え、殴ろうとしただけだったとしてもね。」
遠い目をして葵は言った。
そして思い出したように尋ねた。



