「何で、助けたの?あのまま放って置けば、私は雪に呑まれて、アンタ達の手間が省けたはずでしょ?」

 そう言うと、永璃の横でムスっとしていた幟呉の口が開いた。

「雪崩に呑まれても、あの足なら助かる可能性があったからな。」

「じゃあ、今……殺せば?」

 睨むようにして言うと、幟呉はうっとうしそうに返す。

「殺さない。というか、殺せない。こんな狭い洞窟の中でお前に変身でもされて、暴れられたら上から降ってくる物で俺達はペシャンコだ。」

「そう。……っていうか、あんた話し方違くない?」

「確かに、めずらしいねぇ。幟呉が僕達以外の人間に本性見せるなんて。」

「変な言い方をするな!」

「まあ、確かにめずらしいよな、親にさえ敬語な奴が。」

「永璃!余計な事を言うな!」

「へいへい。……もうそろそろ火が無くなるな。」

「木、ちっちゃいのとかならあるよ。」

 靭が枝を集めている中、私は相変わらず無表情に腕を組んでいる幟呉を見ながら

(親にも敬語なの?変な奴。まあ、この三人は元々変な奴っぽいけど。)

 何て事を思っていた。すると

「ねえ、圭子ちゃんも拾うの手伝ってよ。」
と靭が声をかけて来た。

「えっ、あ、うん。」

 小枝を拾いながら、敵同士なのに一緒に小枝拾いしてるのってどうよ!?と思いながら拾い終えると、さして重要でもないが、結構腹立たしい事に気づいた。
 永璃はライター持ってるからともかく――

「幟呉!あんた何もしてなくない!?」

 指差して勢いよく言うと

「それがどうした。」とあっさりと返されてしまった。

「まあ、コイツはこういう奴だからな。」

 と永璃が木の枝に火を点けながら言うと「そうそう」と靭が相づちを打った。
「ふ~ん」
 そんな奴らを見ながら私は初めてこいつらに興味を持った。