もう人気者には恋をしない

「あっ……いや、これは失礼。

 その……あまりにキレイな黒髪をしてるから、つい見惚れてしまってね。
 いやぁ、参ったなぁ!」


 変に悟られないように、出来るだけ豪快に笑った。

 例の女子は、ポカンとしながら「ありがとうございます」と言った。

 あー、絶対変なヤツだと思われてるよ。

 まぁ普段から変なヤツとは思われ慣れてるけど……このコに対しては、もっと慎重にいかないと。

 この出会いを、無下にしたくない。

 相手を知るには……まず自分を知ってもらわないとな。

 俺は自己紹介をしてから、名前を訊いた。


 このコの名前は……


「あ……私は、一年三組の須藤映見と言います。美術部です」


 と、スケッチブックに書いてある名前を見せてくれた。


 すどう……えみ。


(えみちゃん、また絵本をかいてくれたのー?)


 遠い記憶がよぎる。

 ……あ、そうだった。

 あのコの名前は……えみ。