「えっ!?膝蹴り!!!?極意!!!?」


首を傾げるケイに亜子が耳打ちをすると、


「えっ……」


ケイは絶句し、憐れむように寛貴を見た。


「違いますって、伝授なんてしなくていいんです。

寛貴、プロテストに合格したんです」


泣き笑いする千尋の横で恥ずかしそうに頭をかく寛貴。


「良かった、おめでとう!」


このふたりは大丈夫。


世界の頂点を目指し、離ればなれになっても心はいつも寄り添い合える。


大丈夫だね。


「おい、慶介、お前のせいでうちのハッピーが……ハッピーをあんな体にしやがって!!!!」


お兄ちゃんは相変わらず、何かと理由をつけては帰省して、わたしをバレーの練習に引っ張って行く。


「俺はまだ諦めてないからな。兄妹オリンピック出場を」


諦めの悪すぎるお兄ちゃんだけど、これもお兄ちゃん孝行だと思って付き合ってあげている……。



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