コンクリートに落ちたのはわたしの涙。


全力で戦ったから悔いはないなんて嘘。


負けるのは悔しい、


悔しいよ……


号泣するわたしの隣でケイはわたしの頭を撫でてくれた。


ガラス細工を扱うようにそっと、優しく。


傍にいるだけで心が穏やかになっていくのがわかる。


ケイが好き。


この気持ちは止められない。


「そろそろ閉会式が始まるけど、行ける?」


ケイもタオルの中に顔を入れ、覗き込むようにわたしを見た。


近すぎるケイとの距離に


ドクンッ!


心臓が大きな音を立てる。


「う、うん、大丈夫……早く行かなきゃ!」


平静を装い、涙を拭いて立ち上がろうとするわたしの手首をケイは掴んで引き寄せた。


彼の優しい笑顔につられ笑みがこぼれた。


「うん、いい顔してる。ナナ最高」


ケイの顔がさらに近づき、そっと目を閉じた。


重なる唇の温かさに心がとろけそうになる。


「じゃ、行ってくる」


笑顔で再び試合会場に戻った。


ファーストキスは涙と笑顔、


真夏の青空のように晴れやかだった。



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