あともうひとつ、気になること、
「秋元先輩、真夏なのに大きなマスクをしていたけど、歯の治療はしていないの?」
歯っ欠けババァなんて悪態吐かれるのはさぞ辛いことだろう。
『色々やっているようだがうまくいってないようだ。
父さんだったら何とかしてくれそうだが、俺が声をかけるのもかけ辛くてな……周りの目もあるし。
情けないよな、俺も……』
電話の向こうからお兄ちゃんの大きなため息が聞こえた。
『とにかく今は試合のことだけを考えろよ。
全ては決勝が終わってからだ。これから航空券予約するから切るぞ』
プツンッ!という音の後、規則正しい電子音に変わった。
「ナナ、そろそろ寝るよ!」
美帆の声に携帯を充電器にセットしようとすると、再び携帯が鳴った。
ディスプレイには、幸坂慶介の名前が……
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