「ねぇ千鶴。
なぜ海翔くんがナナちゃんに本気のバレーをするのかわかる?」
「……」
美鶴代先生の言葉に答える千鶴さんの言葉が聞き取りにくい。
盗み聞きが良くないことはわかっている。
でも、自分のことを話しているのに、聞き逃がすことなんてできない。
ゆっくりと体を起こし、ベッドから立ち上がると、音を立てないように点滴スタンドをそっと押して、ドアの向こうの会話に耳を傾けた。
「ナナちゃんは今、高校3年生なんだけど、3年前、中学3年生の時に全国大会で優勝して、全日本メンバーに選ばれたの。
スポーツニュースでも大々的に報道されてたの覚えてない?」
何だか動悸が激しくなってきた。
「うん、覚えてる。天才セッターで、ポスト坂尾って言われてた子でしょ?
そういえば、最近見かけないけど……
まさか……ナナちゃんが……」
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