「海翔くん、ナナちゃん相手に本気で打ち込んでいなかった?」
美鶴代先生の言葉に、
「うん、女の子相手なのに容赦なかった。
『レシーブは正面で受け止めろ!!!!』なんて、鬼コーチみたいだった」
ぷぷっ!
鬼コーチ……。
千鶴さん、鋭いところをついている。
「何で、女の子相手にむきになっているのか理解できなかった。
でも、あの子もすごかった。海翔の本気のスパイクとサーブをひとつも落とさなくて……
返せないボールもあったけど、必ず触れていた。
あの時、周りで見ている人を寄せつけないほどの緊迫感なのに、ふたりの信頼感と深い絆のようなものが感じられて、海翔があの子に盗られてしまうと思って不安になったの。
まさか、ふたりが兄妹だったなんて……」
千鶴さんが大きく息を吐くのが聞こえた。
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