「……、え」
思考が、飛んだ。
時間が止まった錯覚を感じてしまうほど、理解不能の答えを聞いた。
「ぁ、あなたの家じゃ、な」
混濁した頭で、ようやっと紡いだ言葉は、ひどく伝わりにくいものだった。
されど、彼は聞き取る。
聞き取った上で、話す。
「ここ、俺の実家なんだ。三葉がよく来てくれているアパートは、仕事場近くだから借りていただけ。ここ、郊外でね。近隣住民なんて、歩いて行ける距離にはいない。数年前ーー三年ぐらい前まで父親が住んでいたけど、亡くなってさ。“丁度良かったから”、三葉とここに住もうと思っていたんだ」
数年前に父親が亡くなっていたのは聞いていた。実家ではなく、仕事場近くのアパートを借りてそこから出勤するのはごくごく普通の話なのに。
「うん、丁度良かった。一人暮らしを始めた四年前から三葉の写真とか、要らなくなった物とか集めていたのだけど、アパートの部屋だけじゃ収納しきれなくてね。どうしようかと思っていれば、この転機。認知症気味とは思っていたけど、まさか夜中に町まで歩いて、車に轢かれるとは思わなかったなぁ。
早速、この家をリフォームーーとは言っても、直したのは水回りと、一階の部屋ぐらいなもので、窓の目張りとかは自分でした。あんまり防犯性高めると、この家には何かお宝でもあると工事の人に勘ぐられるのが嫌だったから。俺が思いつく限りのことはしたんだ。外から誰も入れないように窓の錠に接着剤つけて、窓を割られて侵入出来ないように板打ち付けてと、かなり大変だったけど」
饒舌な口が、生ゴミと名の付く男の死体に目をやるなり、止まる。
奥歯をギリッと噛み締めて、憎悪を込めて言った。


