「行きましょう、宮本さん。こんな場所から、はやく……はやく、逃げよう」
私のゴミを回収し、飾り。私の写真を撮影し、貼り付け。私の生活そのものを真似し、再現し。内側の住人を閉じ込めるこの異常性溢れる家から、早く出たい。
「歩けますか。何とかして、出口を。はやく、だから、行きましょう」
男の脅威はない。シャッターでも、玄関の南京錠でも無理やり壊して脱出しよう。
「宮本さん、はやく、宮本さん、行きましょう」
彼の、腕を引く。
「早く、はやく、出ましょう。出ましょうよ」
行きましょう。出よう。
その言葉を繰り返した。
繰り返し続けたのは、言葉通りにならなかったから。
「宮本さん!」
声が、跳ねた。
思わず出てしまった声は、動かない彼に向けて。
立ち上がったまま、足は前に出ない。
もうしかしたら、見えないだけで、歩けない怪我をして。
「『行く』、『出る』……?」
いるのかと考える足が動く。
ただし出口ではなく、私の前へ。
向き合う彼。
私の言葉を反芻して、首を傾げた。
「何で、“出なきゃいけないんだ”」
さながら、子供の間違いを正す大人のように、“にっこり”とーー


