如何にして、コレに至るか


瞳孔が開ききる。
部屋の入り口に目を向ける前、髪の毛を掴まれた。

汗臭さと、生臭さ。荒い息遣いに、毛穴という毛穴から吹き上がる汗を撒き散らす男の姿。

爪を切っていないのか、掴まれた瞬間、その箇所(皮膚)が剥けた。

私の名前を叫ぶ彼。
呼ぶではなく、叫ぶ。

それだけの鬼気を、私は見上げた。

人が二人分繋ぎ合わさったに相応しい巨漢が、血走った目でこちらを睨む。

左手で私の髪掴み引きずりーー彼から引き離し、右手に持ったボールペンに舌を這わせていた。

「なんでそいつなんだ!なんで!このっ、このこの、ああっくそが!ふざけんなっ!くそ女!こんなのと寝やがってええぇ!あああ゛!」

人語と奇声が混じり合うほど、男は怒り狂っていた。

彼からある程度引き離されたあと、髪をむしられる。

痛みで嗚咽を漏らす前に、胃が潰れた。
比喩にせよ、男が馬乗りに乗った瞬間は正にそれ。臓器が圧迫され、呼吸が止まる。

「三葉!」

「うるせえええ!やってやる!てめえの前でやってやる!みとっ、見とけ!見とけえええぇ!」

抗う腕も肩に拳を打ちつけられ無力化される。首筋に、奴の涎が垂れた。ボールペンをしきりに舐めていたせいか、奴の口の中にはまだまだ唾液が残っている。

潰れたカエルのような顔が私の顔ではなく、体を見続ける。

上げる声も、男が私の体から退かない限り発することも出来ない。

男の高笑い。彼の叫び。

声なき絶叫が喉から漏れた。

男の熱気、滴る汗と唾液、ブラウスのボタンが無理に千切られる、胸を鷲掴み、爪を立て、にたりと笑った口元から涎、かかって、男の、私の涙を待ち望んで、私の顔を見て笑って、私の体を見て大口開けて、嫌だ、いやだ、いやだ、いやだ!こんなのに、彼以外に、こんなの!やだっ、やだ!助けて、やだよ!宮本さんっ、みやもとさっ、宮本さんっ、ぁ、ああああ!