「宮本さんっ!」
この家、最後の部屋。
駆け込んだ先にあったのは、ゴミの山。
キッチンのゴミとは別に、こちらは袋が破られゴミが散らばっていた。
壁代わりともなろう天井まであるウォールラックには、空のペットボトルや割れた花瓶、歯ブラシ、クシ等、一貫性なくともゴミという統一性あるものがディスプレイされているが、ほとんどが床に落ちている。
ゴミをここに飾るとしても、汚すぎた。冬でなければハエが飛び交うゴミ溜めの中。
「ぁ、いやあああぁ!」
彼が、いた。
ゴミと変わらず、さながら、“ここに捨てられたかのように”、横たわる彼がいた。
「やだ、そんな、みやっ、やだああぁ!」
宮本さんがいた、いたのに、返事をしない。いつものように笑ってくれない、抱き締めてくれない、ゴミの中に、ゴミみたく動かなくて、ゴミじゃないのに、私の大切な、大事な、彼が!
「宮本さんっ、宮本さん!」
横たわる彼に近づく。
うつ伏せに倒れたまま、ピクリともしない。
触れる。そこで、温もりがあるのに気づいた。
生きている。
「宮本さん!宮本さん!」
生きている、生きている、生きている!
彼を抱きしめ、揺さぶった。
「……っ」
彼の瞼が動く。
目が開いた。
「くっ、い、た……」
痛みで苦悶する表情。
彼が生きていた安堵から一転して、その顔を見て絶句した。
殴られたのか、頬に痣が出来、唇から血も出ている。何よりも、彼の顔に黒い線が入っていた。
あの写真そのままとは行かないものの、ボールペンで無理やり皮膚を削ったような黒い線が彼の顔についている。
「みつ、は……?」
その彼が、私を見るなりに、苦悶ではなく驚愕の色を浮かべていた。
「みつ、何で、ここ、にっ……、あいつが!くっ、う」
取り乱す彼。しかして、芋虫が身じろぎする程度しか動けないのは、縛られているからだった。
手首を電気コードで縛られ、その上から更にガムテープでという執拗さで。
「宮本さん、い、今、たすけっ」
「いいから、君だけでも逃げて!あいつが来る前に!」
鬼気迫る彼は、それだけ私の身を案じてくれているのだろうけど、従えない。
護身用がためのナイフを、彼の拘束を切ることに使った。
「いいから、三葉!お願いだっ、三葉!三葉!」
逃げろと言う彼に従わなかった。
泣きながら、ごめんなさいごめんなさいと繰り返す。
二重にされ、なかなか切れない腕の拘束に四苦八苦しながら、彼の指が“外側に曲がっている”のに気づいたからだった。
左手の人差し指、薬指、小指。
遊ぶかのように折られた指。背中も刃物か何かで切りつけられたか、シャツが破け、血が滲んでいる。


