「こんなのって……」
目の前にある彼の顔は、刃物で切り刻まれていた。
後ろの壁紙すらも傷つけるほど、力強くズタズタに。よくよく見れば、黒いペンで顔を塗り潰した痕跡もある。
黒く塗り、それでも物足りず、刃物で傷つけたのか。
見る影もなくなった笑顔。彼の顔の面影すらも残っていない。
ぐちゃぐちゃになった彼の顔の隣で笑う私が、写真でもひどく悲しそうに見えたのは、私の今の心境もあってか。
彼のことを憎んでいるのは、写真からして分かる。もしも、あの男と彼が会えば、この写真のようにされるのだろうか。
「黒い髪」
廊下の髪を思い出す。
大きく脈打つ心臓は、焦燥の表れ。
あの男に捕まる恐怖とは、また違った恐怖が芽生えた。
「宮本さん……!」
彼を、失う恐怖。
この家にいる根拠はない。いるのは、私をここに連れてきた男だけで、私の成すべきことは家から出ることなのに。
足音も気にせず走って向かったのは、まだ見ぬ部屋。
彼がいるかもしれない。酷いことをされている、された。私のせいで、彼が傷付けられ、ころされーー
「やだっ、やだぁ!」
抑えきれない声。自分のことなら、涙も声も抑えられたのに、宮本さんに何かあったと思うと、取り乱す。
失いたくない。大切なんだ。私の大事な人。私よりも大事な人なのに。


