明かりは最初から点いていた。
部屋は男の寝室兼自室。
黒いベッドがあるのだから寝室と言え、自室と言えたのはーー壁におびただしい量の私の写真が貼ってあったからだった。
ストーカーの定番としては、よくある光景。
けど、壁だけでなく、天井や床にまで浸食している写真の量は定番の域を越える。
「……」
言葉が、出なかった。
ゴミ袋から、私の部屋。それらを目の当たりにした今、心のどこかで、“まだこれは序の口”だと思っていたのかもしれない。
写真を踏まないように作られた“道”ーー唯一見えるフローリングを気にとめる余裕なく、自身を踏みつけた。
こんなにも写真を撮られているのに気付かない自分に怒りを覚えたのかもしれない。
スマホをいじっていたり、喫茶店でコーヒーを飲んでいたり、友達と歩いていたり、道端の猫を撫でていたり、道を尋ねてくる人の相手をしたり、ゴミを捨てに行ったり。
「……」
大学から帰ってきた時、うたた寝をしている時、ベランダの花に水をあげた時、洗濯物を干す時、朝パジャマ姿でカーテンを開けた時、出掛ける準備に着替えた時、風呂上がりに暑くて下着のみの時。
「……」
全て目線は、明後日の方角。隠し撮りなら気付かないことに咎めるわけもないが、いくらなんでも、量が多すぎる。
いつから盗られていたのかは定かじゃない。中学校や、小学校。どこから入手したのか、卒業アルバムの切り抜きまで丁寧に飾られていたものだから、古い過去すらも洗いざらい知られている。
果ては、私の寝顔まであったのだから、自身の間抜けさに首を絞めたい気にもなった。
深夜、私の部屋に忍び込み、写真を撮ったあの男にすら気付かずに、ずっと寝ていた。
改めると、死にたくなる。
この写真(汚点)ごと、燃やして消えたい気分にもなったが、まだ、死ぬわけにはいかなかった。
「……」
写真を踏みつけ向かう先。
乱雑になったベッドの枕元に位置する壁には、他の写真よりも、“特別”と言えよう物があった。
この写真だけ、一際大きさがある。
私の身長よりも高く、ほぼ壁一面を占める写真に写っていたのは、私と宮本さんだった。
私も、この写真を持っている。
忘れもしない。彼と付き合い、初めてのクリスマス。イルミネーションが綺麗な場所までドライブに行き、そこで撮った初めてのツーショット。
初めてのクリスマスデートで、雪が舞い、イルミネーションと共に見ると本当に綺麗だった。
彼と過ごせる最高の一日。
その一瞬の幸せを閉じ込めた一枚は、私も部屋に飾っている。
大きさは違えど、写真の中身は同じ。
幸せをそのまま形にしたように笑う私と彼なのに。


