ギャップの凄さを噛みしめているといつの間にか白華学園に辿り着いていて、同時にぽつぽつと雨が降り始めた。
「あとは一人でやれよ!」
そう言って自転車のハンドルを詩織に差し出し、ひとり昇降口へ行こうとする千堂の背中に詩織は聞きたかった事を聞いてみた。
「あのっ!なんで呼びに来てくれたんですか?
わざわざ呼びに来なくても...」
「あのな......こっちだって行きたくて行ったんじゃねえ!電話にも出ねえし」
イライラが募っていたのだろうか、周りに人がいないか確認してから大声を上げる千堂。
でも電話もしてくれたんだ。
「ごめんな...」
「一応、お前は俺の彼女だから...しょうがねえじゃん」
『ごめんなさい』の「さ」を言おうとすると、千堂の恥ずかしそうな声でかき消された。
なんだろう、変だ。
心臓が変だ。
おかしくなってる。
「今度からは気をつけろよ!」
あんたがお昼作れとか部活が終わるまで待ってろとか色々注文付けるからじゃん!
そう怒鳴り散らしてやりたいのに去っていく千堂の後ろ姿を見つめる事しか出来なかった。



