「ごめんなさい。付き合えません」


目を見つめて自分の気持ちを伝えると松永さんは少し戸惑いを露わにした。



「でも拓真は詩織ちゃんの事好きじゃないんだよ?それに、詩織ちゃんだって本当は好きじゃないんでしょ?」



「えっ」



「だって拓真と詩織ちゃんはこれまで何にも接点が無かったはずなんだ!

なのに急にあいつ、ただ詩織ちゃんと付き合うって言い出して、問い詰めても何も言ってくれない......


何か理由があるんでしょ?
拓真と付き合い続ける理由が!」



松永さんの迫力さに負け一歩段を後ずさる。



怖い、とかじゃない。

どうしてそこまで千堂の事を想うのか不思議でしょうがない。




それと......心の片隅で"邪魔しないでほしい"なんて思ってる。


___私はバカだ、バカだ、バカだ。




気づいちゃいけない。




でも口が勝手に開く。



「私は千堂と付き合います。私の彼氏は...千堂ですっ」





バカな事を言ってるのに気づき、自分が言った言葉をかき消すように詩織は事実の後付けをのせた。




「そ、それに!松永さん、私の事好きじゃないですよね?」



そんな詩織の言葉に一つ二つ瞬きをして松永さんはゆっくり本当の気持ちを喋り出した。



「うん、好きじゃない。ごめんね。好きって言って好きじゃないとか言って本当最低だよね.........


でも諦めないから、じゃあまた今度ね」




何も言えずにいた詩織に松永さんは一言、言い残して去っていった。



好きじゃないのに諦めないなんて.........

意味が分からない。
そっちの理由も教えてもらいたい。




緊張していた肩を下ろすと詩織はゆっくり風紀委員会室へと向かった。



千堂なんか嫌いだ、
そんな気持ちを言い聞かせて。