生徒が多いから。
私たちを、幸来や早乙女くんが見えることはない。
私は柱に隠れ、焼きそばパンを買った慎を待った。
「姉ちゃん」
「早乙女くん、私たちのこと覚えていなかったわ」
「そうなんだ…」
「慎。
早乙女くん、幸来について何か言ってた?」
「何も言ってないよ。
朝一緒に来ただけの関係みたい。
過去についても何も」
「そう…。
忘れているのか、それとも忘れるようにしているのか」
「様子見、だな」
「そうね。
慎、これからもよろしく出来る?」
「任せて。
姉ちゃんのためなら、俺何でもするから」
2人で、幸来と早乙女くんの待つ場所へ向かう。
慎が早乙女くんを「ニコっぺ」と呼んでいたので、私もそう呼ぶことにした。
怪しまれないように。
放課後。
私はさりげなさを装いながら、幸来に早乙女くんは好きか聞いた。
幸来は「彼女いるんでしょ?」と言っていたけど。
幸来は人気者の久遠先輩みたいな人が相手なら、諦めないけど。
彼女持ちなんて叶わない夢は抱かない子。
じゃあ、彼女持ちじゃなかったら、早乙女くん好きなの?
てか私、早乙女くんが彼女持ちとは思えない。
私前の学校にいた時、友達多かったから。
早乙女くんの学校に知り合いがいる子もいたから。
色々聞いたけど、彼女がいるなんて噂は全くなかった。
そもそも、学校にまともに通わない、ミステリアスな子だったみたいだから。
恋人以前に、親しい友達もいなかったとか。
早乙女くんに恋していた女子は多かったみたいだけどね。


