慎に行くことを伝え、慎に幸来を見張ってもらう。
慎に幸来を任せ、私は並んでいる早乙女くんに近づいた。
「早乙女、二瑚くん?」
声をかけると、早乙女くんは怪訝な顔をして振り返った。
「私、内山雫。
慎の姉で、幸来ちんの親友よ」
「あ…それで僕のことを。
初めまして、早乙女です」
私のことは忘れているようだった。
別に良い。
嫌だとは思わなかった。
だって、幸来にバレてしまうのは駄目だと思ったから。
幸来はきっと、早乙女くんに一目惚れした。
きっと、久遠先輩以上の思いを抱えているはず。
ただし幸来は、早乙女くんの過去や罪を知らない。
早乙女くん自身、幸来をどう思っているかはわからないけど。
少なくとも今は、恋心を抱いていないはずだ。
だから幸来には過去や罪を伝えていないはず。
…恋心以前に、心を開いていなそうだ。
このまま。
このまま早乙女くんと幸来が良い感じに行かなければ。
私は心置きなく、復讐出来る。
幸来に復讐することもなくなる。


