目に薄っすら涙を貯め、少しだけ痙攣している彼。
帽子をかぶっていたけど、あたしは見た。
風に靡くサラサラの黒髪と、繊細なフレームの眼鏡、整った顔立ちを。
……もしかして彼が、綿貫沙羅と一緒にいた男………?
彼は病院へ運ばれた。
私は足元に落ちていた生徒手帳を拾った。
私と違う学校の生徒手帳だった。
【早乙女 二瑚】
「さおとめ…にこ……」
私は振り仮名を呼んだ。
この早乙女くんが…私の復讐相手?
倒れたのはどうして?
病気持ち?
じゃあ何で叫んで倒れたの?
…私が泣いていたから?
冗談じゃないわ。
何で私が泣いたから倒れたのよ。
もしかしてようやく、自分が犯した罪に気が付いたの?
許せない。
最初経営難に追い込んだのは、綿貫沙羅だけど。
1度お店は立ち直った。
もう1度経営難に陥らせ、パパを自殺に追い込んだのは、彼だわ。
本当に私が復讐するべき相手は、彼だわ。
許さない。
私は生徒手帳を握りしめた。
グシャッ……


