「ああ。
見知らぬ男と一緒に街を出歩いたり、綿貫沙羅の家に入って行ったり。
かなり親しい関係だったみたいだぞ。
捕まった日も、一緒に歩いていたのを目撃されているらしい」
「じゃあその男が犯人じゃない?
その男は誰なの?」
「目撃されたのは夜だったみたいだからなぁ。
背の高い男と一緒に歩いている、のしか確認されなかったらしい。
きっとオレが見た、黒髪眼鏡の男だろうな」
黒髪眼鏡の、男。
私は放課後になるとスーパーへ出入りし、万引きGメンのように、万引きしている奴がいないか確認した。
特に気にしたのは、黒髪で眼鏡の男。
…と思ったらかなりいて、探すのに苦労したんだけど。
ドンッ
「あ、ごめんなさい。
大丈夫ですか?」
「こ、こちらこそすいません。
大丈夫ですから」
帽子を目深に被った男の子とぶつかった。
帽子のツバを持った彼は、そのままスーパーを出て行った。
「………?」
「どうしたんだい雫ちゃん」
「……あの子、何であんなに青白い顔をしていたんでしょうか?
しかも何だか、女ものの香水の匂いがキツくて…」
「青白い顔に見えたのは、光の加減じゃないかい?
香水は、母親のモノだろうよ。
しかもあの男、眼鏡なんてかけていなかったじゃねーか」
「……気のせいですよね」
今思えば、きっと彼が…早乙女二瑚だったんだと思う。
青白い顔をしていたのも、きっと吐き気や腹痛と戦っていたんだろうな。


