それから数日後。
私は店員さんの斎藤(さいとう)さんと話していた。
斎藤さんはかなり不良めいた口調が特徴の、熊みたいなオジサン。
だけど凄く私に甘く、優しくしてくれた。
「そういや雫ちゃん、知っているか?」
「何をですか?」
「また最近、万引き犯が現れているんだ」
「え?
だって、綿貫さんは捕まったはずでは…」
「最近また、経営難でなぁ。
きっとあの男が万引き犯に決まっている」
あの男?
「斎藤さん、あの男って?」
「ああ。
綿貫沙羅が逮捕された日、妙な男に綿貫沙羅について聞かれたんだ」
「妙な男?」
「ああ。
眼鏡で黒髪の、顔立ちは整っていたが、暗い瞳をしている男でな。
弟ではないと言っていたぞ」
「暗い瞳……」
「アイツ、家庭環境悪いだろうな」
斎藤さん自身、養護施設で育ったらしい。
現在斎藤さんはスーパーで働きながら、その養護施設でも働いている。
だから、家庭環境が良い子か悪い子なのか見極められるらしいのだ。
「しかも警察の話じゃ、綿貫沙羅は最近男と同居していたそうじゃないか」
「男と同居?」
そんな話、教室では誰もしていなかったけど……。
まぁ綿貫さんはクラスで浮いた存在だったから。
興味なかったのかな、皆……。


