綿貫沙羅は、私と同じクラスだった。

当時私が住んでいた場所は田舎な感じで、私をはじめとする学生は大人しい人が多かった。

だけど綿貫沙羅は、中でも目立つ、比較的派手な子だった。



両親が事故で亡くなったのをきっかけに、親戚を頼りにこの街へ引っ越してきたけど。

その親戚と喧嘩し、それ以来駅前のアパートに一人暮らしをしているみたいだった。

教室では誰とも話さず、誰とも親しくなく、授業も殆どサボっているような問題児だった。

夜に街を徘徊しているなどと言った悪い噂もあった。

私もパパや木原さんから、関わらない方が良いと言われていた。




そんな不良という感じの綿貫沙羅が、万引き犯だったなんて。

私はさほど驚かなかった。

特に働かずに、毎日お昼ご飯を持ってきていたのに、私は薄々疑問を感じていたから。

あのお昼ご飯が万引きだったと知れば、納得がいった。




綿貫沙羅が逮捕され、スーパーは前と同じ経済状況へ戻るだろうと思っていた。

私の予想通り、スーパーの経営状況が良くなって来た。

パパも凄く喜んでいた。





ある日、私がパパの仕事終わりを待っていると。

先に仕事を終えた木原さんがテレビをつけた。

中学2年生の少年のお腹の中から裁縫針が見つかったという物騒なニュースが放送されていた。




「裁縫針かぁ。
怖い事件が起こったものだな」

「ええ。
何で裁縫針なんて見つかったのかしら?」

「さぁ。
詳しくはやっていないみたいだな。
雫ちゃんも気を付けるんだぞ」

「ありがとう、木原さん」





木原さんはテレビを消した。