「二瑚?」
「どうした?」
「何だか嬉しそうだけど。
何かあったの?」
「ん?
何もねーけど?」
あたしの手を引きながら歩く二瑚。
校門から校舎へ続く道、誰もがあたしたちに注目していた。
凄く恥ずかしいけど、嬉しかった。
あたしは二瑚のものだって言われているみたいで。
「俺」
「え?」
「転校してきて良かったわ」
「二瑚?」
突然何を言い出すんだ?
「幸来に出会えて良かった。
幸来に会えて、俺は変われたんだよ」
二瑚は振り返る。
年下らしい、無邪気で可愛らしい笑みを浮かべていた。
「二瑚…。
あたしも、二瑚に出会えて幸せだよ」
「幸来……」
立ち止まった二瑚は、ふっと笑った。
…あの、黒い笑みを。
「本当単純だな。
単純すぎて、何も出せねーよ。
その単純さ、何か賞でも取れるんじゃねーの?」


