いつもの電車に乗りこみ、いつもの定位置につく。
「今日も相変わらず混んでいるな」
「え?」
「……どうした?」
二瑚が、話した。
電車の中では一切話さなかった二瑚が、話した。
「な、何でもないっ。
確かに混んでいるよね」
「ああ。
このままじゃ降りるのも大変そうだな。
幸来、人混みに交じって、隣駅まで行くなよ?」
「あ、当たり前だよ!」
初めての、電車の中での会話。
ドキドキしたけど、嬉しい。
「早乙女くん!」
「おはよう早乙女くん!」
駅に着いて、学校まで歩いていると。
この間二瑚に挨拶していた女子生徒が2人、通り過ぎて言った。
「おはよう」
二瑚は相変わらず笑顔で返していた。


