駅に着いたあたしは、二瑚と一緒に歩く。
前は二瑚が手を引いてくれたというのに。
最近は手を繋いでくれなくて…少し物足りない。
その上。
「早乙女くん!」
「おはよう、早乙女くん!」
「おはよう」
二瑚はすれ違いざま挨拶をする女の子たちに向かって笑みを向ける。
営業スマイルだから、本物の笑みではないけれど。
あたしには、滅多に笑いかけないのに。
何であの子たちには、笑っているんだろ。
あたし、二瑚の彼女のはずなのに。
あたしが二瑚と付き合っていることは有名だから。
二瑚に告白する女子はいないらしいけど。
やっぱり二瑚はモテるから、嫉妬もしちゃう。
…あたし、こんなに嫉妬深い女だったのかぁ。
「じゃ、今日も頑張ってくださいね。上野(うえの)先輩」
「うん。
二瑚も頑張って」
あたしを教室まで送ってくれた二瑚は、営業スマイルを浮かべたまま、自分の教室がある2階へ下りて行く。


