「二瑚、食べないの…?」
ナポリタン嫌いじゃないと言っていた。
食べられなかったら、最初に言うはずだ。
普通の人は、だけど。
二瑚は先ほど、人に弱点や秘密を教えてはいけないと言っていた。
あたしも例外でないとしたら、ナポリタンが死ぬほど嫌いなこと、あたしにも隠していたのだろうか?
「二瑚、ナポリタンのお皿貸して!」
「は?」
「あたしが食べてあげる!
二瑚ナポリタン大嫌いなのに連れてきてごめんなさい!
あたしが責任もって食べるから!」
サッと両手を差し出すと。
二瑚にパシッと両手を叩かれた。
「嫌いじゃない。
むしろ、俺はナポリタン好きだ」
「ふぇ?」
あたしの変な声を聞いた二瑚は、観念した様に溜息をついた。
「ナポリタンは嫌いじゃない。
むしろ、幸来と同じぐらい好きだ。
……ただ、トラウマがあるから、普通に食べれないだけだ」
最後の方は、本当に消えてしまいそうな声だった。
いつも自信に溢れている表情も、どこか哀しそうに見えた。


